Dear Great Hackers

  1. インタビュー
  1. タイアップ

Wikipediaに載るエンジニアを創出したい。富士ソフトが目指すエンジニア組織の未来。

富士ソフト株式会社はシステムインテグレーションやプロダクト開発・販売を行う東証プライム市場上場企業。独立系SIerとしてどの企業グループにも属さず、先端技術の提案・創造に強みを持つことから、急速に成長を遂げ、社員数が約9,000人の規模にまで拡大しました。近年では「AIS-CRM(アイスクリーム)」という技術戦略を掲げ、AI、IoT、Security、Cloud、Robot、Mobile/Automotiveといった先端技術に挑戦を続け、日本のDX、CXの現場を牽引し続けています。

今回は富士ソフトの特徴や「ベンチャー魂」へのこだわりなどについて常務執行役員の八木 聡之氏、システムインテグレーション事業本部の大槻 剛氏、同本部の渡辺 裕一氏にお話を伺いました。

プロフィール

八木 聡之(やぎ さとし)
富士ソフト株式会社
常務執行役員

イノベーション統括部長

2000年4月に富士ソフトに入社して以来、7年間は大型汎用機のインフラ技術者として活動。その後、オープン系技術者へのスキルチェンジをきっかけに、様々なスキルを保持してシステム全体をグランドデザインするITアーキテクトに興味を持つ。会社全体を横断して技術的な支援を実施する部門で、8年間ITアーキテクトとして設計支援やトラブル支援を実施した後、2015年に現在の前身組織であるイノベーション推進部を設立。AI分野やモバイル分野の最新技術分野を調査研究しながら、ビジネス化推進に従事している。

 

大槻 剛(おおつき つよし)
富士ソフト株式会社
システムインテグレーション事業本部
インフォメーションビジネス事業部
第1技術部
第4技術グループ 主任
スペシャリスト認定:エバンジェリスト/クラウド(フェロー)
法人のお客さま向け、クラウド・コンテナxDevOps等を担当。お客さまと案件を作るためのPoC(実証実験)系の業務も担い、「アプリケーション開発部門のなかのDevOps・インフラを一手に引き受けられるチーム」のエキスパートとして活躍中。また社内を中心に勉強会等も積極的に主催。2022年4月、社内でスペシャリスト認定(※)を受ける。

 

渡辺 裕一(わたなべ ゆういち)
富士ソフト株式会社
システムインテグレーション事業本部
メディアネットワーク事業部
第2技術部
第5技術グループ 課長
スペシャリスト認定:アーキテクト/IT&プロセス改革(エキスパート)
PMとして、様々な案件のマネジメントを実施。案件の内容は電力系、業務系、検索サービス、配信サービス等、幅広く様々。新しいことや、短納期なものが多いのでアジャイルよりの開発スタイルで進めており、クラウドサービスの利用、try & errorなど込みでプロジェクトを遂行。WEBアーキテクトの第一人者として、2022年4月に社内でスペシャリスト認定(※)を受ける。

 

※「スペシャリスト制度」による認定
参考:https://www.fsi.co.jp/recruit/career/index.html

様々な経験ができるからこその「発見」「探求」そして「成長」

――はじめに、皆さんのこれまでの簡単な経歴と、どんな仕事をされているか教えてください。

渡辺 裕一氏(以下、渡辺):私は1997年の新卒入社です。志望動機は社会インフラを制御するシステムに携わりたい想いがあったからです。当時は電話の交換機全盛の時代で交換機の開発に入るのが王道みたいなところがありました。電話機をつなぐ交換機の開発案件に携わることができてラッキーと感じましたが、実際はとても大変でした。今の自分があるのは、あの頃の経験が生きているからだと思っています。

4年経って交換機を卒業してWEBの分野に入り、それ以降はWEBの畑を歩んでいます。WEBの世界に転身してHTTPプロトコルに出会いました。

プロトコルなんて言葉は知りませんでした。交換機の世界ではデータは電文と呼んでいました。扱うデータもバイナリデータで、ヘッダがあってレングス長をみて構造体を移動させながら情報を解析して何かをする。でもHTTPプロトコルではデータの内容はテキストで書かれていて、「どうしてこんな簡単な仕様で通信できるのか」とショックを受けたことを覚えています。これが自分のなかではパラダイムシフト的な転換点になっています。

大槻 剛氏(以下、大槻):私は現在6年目の「出戻り社員」です。2001年に富士ソフトに入社した後、当時、ソフトウェアエンジニアとしてハードウェアの「両方できたらかっこいい」と思ったことがきっかけで、台湾のネットワーク会社に転職し、ネットワークとハードウェアの開発に取り組んでいました。

その後、縁があって再び富士ソフトに入り直しました。様々な経験を積んで、現在は DX(デジタルトランスフォーメーション)やCX(コーポレートトランスフォーメーション)の戦略チームでDevOpsのエキスパートをしています。

八木 聡之氏(以下、八木):私は2000年の新卒入社です。当時でも古典中の古典といえるメインフレームに関わることになり、アーキテクチャ的には1960年代にほぼ固まったような世界で7年ほど銀行系を渡り歩きました。2007年からは、オープン系の技術を持っていなかったので、いろいろと勉強をはじめました。

そこで良かったのが、メインフレーム以外の知識の幅を広げるために、多種多様な案件のトラブル支援を行ったことですね。トラブルが発生している現場に向かい、どんな技術で何をやっているのかを知りボトルネックを探して解決する経験を積みました。

その結果、当社には優秀な技術者が数多く在籍しており、会社を支えていることがわかったのです。「富士ソフトの技術力の高さを活かし、会社のポジショニングをあげたい」という想いがだんだん強くなり2015年に社内で先端技術調査に特化した組織であるイノベーション推進部を設立しました。現在ではAIやクラウド、5Gに代表されるモバイルといった様々な分野の先端技術を調査・研究して、富士ソフトのビジネスに組み込む活動を続けています。

「規模」の優位性と「多様性」を活かして人を育む

――50年を超える歴史がある富士ソフトの社会的役割の変化について教えてください

八木 : 最近の20年から30年で当社の社会的な役割は間違いなく変わったと思います。

大きな変化として、私が入社した頃の当社は下請け案件がかなり多かったのですが、現在では大規模なプライム案件(※)を多く扱う会社になったことです。当社のようなSIerがプライム案件を円滑に遂行する為には、技術スキルだけでなくコンサルティングやプロジェクトマネジメントといった、様々なスキルを保有した社員を揃える必要があります。そのため、富士ソフトは採用と教育に力を入れ、高スキルを保有した社員を保つように心がけています。例えば新卒採用において、近年は毎年800人規模の採用をしている他、中途採用にも積極的に動いています。その結果、現在では社員9,000人の規模にまで成長しています。雇用面でスケールを出すことは社会的に見て重要で、多くの人々が輝いて働ける受け皿を導き出していくことは富士ソフトの大切な役割の1つだと考えています。

*プライム案件:クライアントから直接受注をした案件のこと。

大槻:当社の場合は幅広く門戸を開いているので多種多様な人々が集まっているのも特徴です。今まで技術職、理数系の人が中心だった部署に文系の人や公共系の人たちが入ってくることで、新しいアイディアが生まれて「いいな」と思っています。人数が多い強みは、何か疑問があり、聞こうと思ったら教えてくれる人が数多くいることですね。

渡辺:規模の優位性は確実にあると思います。最先端で仕事を作り出していくキツさは正直ありますが、会社単体で9,000人超の社員がいることは世の中に誇っていいと思います。そういった意味で社会に貢献している面があると感じています。

お客さまからいただいた1つのプロジェクトにしっかり取り組めば、それが良い仕事につながり、良い仕事が世の中をより良くしていくからです。9,000人が関わったコードが結果的に世の中を良くしていると考えると、私たちが役に立っていると感じられます。これから、そういったエンジニアを増やしていきたいですね。

八木 : 学生のときにIT技術やAI技術に触れていた人が入社されることが多いのは事実ですが、逆にいうとそのような技術を経験していなかった人々がどう活躍できるかがポイントです。当社が幅広く様々なことに取り組むためには、多様な能力を持った人たちをまんべんなく採用して、そのなかで活躍できるフィールドを用意する必要があると考えています。

その意味で、教育制度には、今かなり力を入れて見直しているところです。例えばAI分野では、私も参画している日本ディープラーニング協会のジェネラリスト検定(G検定)などの資格取得制度を充実させ、現在では300人弱の社員がG検定を取得しています。

E資格(JDLAディープラーニングフォーエンジニア)も同様で、社員がオンラインで学べる環境を作っています。

実は当社でG検定を教えている専任講師は、もともと技術を経験してなかった元営業職の女性です。今では彼女が何百人も教えて資格を取得しています。このように人を育てる環境が富士ソフトにはあります。

「先端技術」を主導する「アーキテクト」が会社の成長の鍵

――プライム案件を獲得するために、ポイントとなったことはなんでしょうか?

八木 : プライム市場には強力な競合が揃っていますから、我々がプライム案件を取るためには「飛び道具」を出さなければなりません。そもそも当社が下請け中心のビジネスからプライム案件にシフトしていく過程で、プロジェクト全体を管理するプロジェクトマネージャー、お客さまと話すコンサルティング、そして、技術的観点から全体設計をするアーキテクト、この3つの能力が必要と考えていたのですが、私はその中でもアーキテクトの役割に注目していました。例えば「日本初」となる世界レベルの技術にチャレンジすることでプライムビジネスでも勝負ができると考えたのです。

大槻:映画「マトリックス」の最後のボスが「アーキテクト」でしたが、日本政府がクラウドをやり、エバンジェリストといった言葉が使われるようになり、アーキテクトという言葉も広まったと感じています。

八木 : 私がアーキテクトとして担った案件で例を挙げると、2012年、日本で最初に官公庁にパブリッククラウドを導入したのが富士ソフトです。
その他、大手教育系企業の学習用タブレット開発では、Androidをベースに専用化して、子供たちが安心安全に使えるアーキテクチャを構築しました。このプロジェクトは半年間の短納期だったことも強く印象に残っています。

大槻:私と八木さんが出会ったのは6年前、ローコード/ノーコードのプロジェクトの立ち上げ時に課題があって前に進めなくなったときです。このとき、アーキテクトである八木さんが加わったことで問題が整理でき、たまたま私が趣味で書いていたシェルをベースにして、自動的にクラウドを作る仕組みを開発しています。こうやって0→1でモノを形にするのがアーキテクトだと思いましたね。

渡辺:私自身がアーキテクトとして、最近、スペシャリスト認定をしてもらったのですが、今、2人の話を聞いて、あらためて私は「アーキテクトになりたい」と思ってなったわけではないと感じました。ネットを検索するとアーキテクトになるために必要なスキルが数多く表示されます。また、「これができないと、アーキテクトになれない」と書かれていたりします。

でも私の場合は、まず、責任を持って自分の仕事をしようと考え、「お客さまにとって価値とは何だろうか?」とか「一緒に働くチームメンバーが幸せになるには」といったスタンスで取り組んできた結果、必要なスキルが身に付き、結果としてアーキテクトになっていました。誰にでもできるはずで、ただ、それに気が付いていない人がたくさんいるだけだと思います。

――先ほど、「飛び道具」の話がありましたが、どのような技術を指すのでしょうか?

八木 : 富士ソフトが成長するためには世界レベルの技術が必要だと実感していて、当社は先端技術の取り組みに注力しています。現在は「AIS-CRM(アイスクリーム)」という技術戦略を立てています。

「AIS-CRM」とは、「AI」「IoT」「Security」「Cloud」「Robot」「Mobile/AutoMotive」の頭文字をつなげた語です。富士ソフトの先端的な技術への取り組みを表しています。本年度はさらにDXや5Gを加え、「DX AIS-CRM SD (5)G2」を中期経営計画の技術戦略として掲げています。

「AIS-CRM」はあくまで現在のトレンドであって、未来永劫使える技術ではありません。「AIS-CRM」に拘らず、アーキテクトが中心となって、エンジニアが「好き勝手に先端技術に取り組んでいたら、いつの間にか評価されていました」と言える環境を作りたいと考えています。それが新たな当社の発展を促していく力になると考えています。

「世の中のために何ができるか?」という想いを持っている人は強い

――先端技術に取り組む富士ソフトでは、どんな人が活躍していますか?

大槻:新しい技術だからとか、経営的に見て「儲かるからやろう」というだけでなく、当社にはその領域が好きな人たちが活躍できる場があります。例えば、DevOpsが話題になる前でも「これが好きです」とやり始めると、「じゃあやってみなよ」とやらせてくれました。その後、芽が出て、1つの事業部になっていくこともあります。何かタイトルを持っていなくても、皆プレーヤーになって活躍していると思います。

技術的な興味や関心を突き詰めたいという思いを受け止める環境があり、面倒を見てくれる人が会社の中にいます。当社は技術戦略「AIS-CRM」で、新しい技術に取り組んでいますが、これらはタイトルが付く前から、私たちが普段から地道にやってきたことです。いきなりやっても、単純に勉強しただけでは使い物にはなりません。付け焼き刃で講習に行って「スクラムマスターです」といっても実践経験がなければ、それはできないのと同じことです。

渡辺さんが先ほど、結果としてアーキテクトになったと話しましたが、毎日、当たり前のことをやり続けるのは大変なことですが、それをやり続けたことがスペシャリストとして認められる結果につながっています。当社ではAIやセキュリティなどの現場で実際に働いている人がスペシャリストになっています。

――これから同じ仲間として、どのような人を求めていますか?

渡辺:熱い人、何か1つ好きなものを持っている人、自分を表現できるものを持っている人は何をやらせても強いと思っています。プログラミングなどITの技術は、正直、あとからいくらでも身に付けられます。

大槻:最近、私はフィーリングも大事だと思うようになりました。想いが前のめりで技術が追いつかない人でもトライする心を持っていることが大事だと思います。技術に自信がないと思っている人には「ご安心ください、ここにプロがいっぱいいますよ」といいたいですね。要は覚える気があるかどうかだけだと思います。

八木 : やる気がある人は、おそらくどこに行っても通じると思います。それもあり、私はもう少し裾野を広げています。実は以前、私は富士ソフトを辞めようと思った時期がありました。結局、辞めずに今ここにいるのは、富士ソフトが大好きだと思ったからです。その最大の理由は皆が真面目にお客さまのために仕事をしていたことでした。最後はお客さまのため、社会のためになる仕事ができることに喜びを感じられるかが大切だと考えています。

「世の中のために何ができるのか」という秘めたものを持っている人はやはり強いです。その想いをコーディネートするのが当社の役割だと捉えています。

「50年の新米」企業。チャレンジできる環境が「働きがい」を生む

――皆さんはどんなときに「働きがい」を感じていますか?

大槻:私は「出戻りです」と面白がって話していますが、出戻りという障壁なしで、やった分だけ、声を出した分だけ評価してもらえることがやりがい、働きがいになっています。

八木 : 「出戻り」はマイナスに思われることが多いようですが、当社にはそういうことがまったくないです。むしろ今、「出戻りの人を探そう」くらいの勢いがありますね。

渡辺:私は職人気質があり、モノ作りが好きです。小さい頃からプラモデルを作ったり、回路をいじってみたりする趣味がありました。今は、キャンプの道具を集めてカスタマイズするのが好きです。そんな気質が根底にあるので、お客さまから相談をいただいて、1つのシステムを作り上げることに喜びを感じています。

そして、チームのメンバーが、それぞれの特性を活かしてスキルが伸びて喜んでいる表情を見て、みんなが成長していることを実感しながらゼロベースでモノを作っていけるのが働きがいになっています。

八木 : 矛盾するかもしれませんが、変化があることに働きがいを感じています。変化を嫌う方もいますが、少なくともここにいる3人に共通しているのは20年間、やっていることが変化し続けていることです。

大槻:私も変化やスキル転換できるのは富士ソフトの良い点の1つだと思います。例えばクラウドの会社だとクラウド関連しか経験できないということが多いようですが、当社では自分の好きな方向に進むことができますし、さらに新しい技術にも触れることもできます。

渡辺:そうですね。最近はクラウドが主流となり、便利すぎて今の人は学ぶ機会が減って損をするのではないかなと余計な心配をしてしまうほどです。私も富士ソフトでパラダイムシフトを経験し良い転換を図れました。

八木 : 世界が変化すれば多少は実績があっても最初はみんなゼロです。言い方を変えると1からチャレンジできます。その変化に対応して力を発揮し、次の波に乗るようにトライできるのが面白いと思っています。

私が最初にメインフレーム技術を任されたとき、当時「SE35歳定年説」という言葉が流行っていたこともあって「この技術を続けて35歳まで生きてられるだろうか?」と思っていました。そのことを思うと、今は何だろうと楽しくできます。あとは本人が波に乗るだけの問題です。他の業種業態の方に比べると、IT業界にはステージが多いこともありがたいことだと思っています。

――新たにチャレンジできる環境が富士ソフトにはあるのですね。

八木 : 「ベンチャーであり続けたい」との想いが当社の経営トップにあります。IT業界で50年やってきても代表取締役の坂下の認識は「50年の新米」です。我々がベンチャー魂を忘れたら駄目だとトップが明確にしているのは良いことだと思っています。本当のベンチャーとは若干、違うニュアンスもありますが、志として持ち続けたいですね。

Wikipediaにも記事が書かれるエンジニアを創出したい

――これから、皆さんが富士ソフトでやりたいことや実現したい夢を教えてください。

大槻:私がスペシャリストになって思ったのは、全社員に何らかの称号が1つ付くようにして、全員がスペシャリストになれる会社を目指したいですね。

渡辺:その気持ちはわかります。私も似た感覚で、今はVUCA*の時代といわれています。DXなど新たな変化に対応していかなければならず、自分自身がその変化の最中にいるのかピンときてない感覚も少しありますが、八木さんがDX戦略を立ち上げ、現場レベルでも真剣に考えなければならないと思っているところです。そんな変化に対応できるプロジェクト運営を目指すにはアジャイル的なマインドセットが必要だと考えています。

*VUCA=Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた造語。不確実性が高く将来の予測が困難な状況を示す。

このマインドセットを植え付けるためにも、次代を担っていけるリーダーをたくさん作っていきたいですね。キーワードだと思っているのが「プロジェクトエコノミー」です。20世紀では、大量生産・大量消費で良いものを作れば売れるといった流れで構築された組織が数多くありました。これからの時代は全てプロジェクトが基本となるイメージで、人に仕事がつくのではなく、仕事に人をつけていこうという考え方です。

まずプロジェクトがあり、それを成し遂げるメンバー、チームという単位で仕事をしていくので、将来的には組織はよりフラットになっていく可能性があります。このアジャイルベースのマインドセットで運営して新しいことをやり、付加価値を作っていく組織・プロジェクトに憧れのような感覚があります。階層構造は無くならないと思いますが、そうだとしても私が携わっているグループでは少しずつ変化を起こしていきたいです。

大槻:とても良い考え方だと思います。新人教育も、以前は講師を呼んで何ヶ月も実施していましたが、最近では1カ月か2カ月と早めにグループに配属されるようになりました。私のチームでも新人教育に取り組んでいます。その一環で、渡辺さんがいったように案件に人を付けるように変えたことで仕事が増えました。

教育のやり方を変え、自分たちで作ったものに引き寄せていくことができているので、新人教育も仕事も面白いです。「やらされる」ではなく「やっていく」になりつつあります。

私たちが入社したときはこんな仕事の仕方はありませんでした。大規模の案件に入れといわれて仕事をしても「役立っているのかな?」と感じていました。今のやり方だと、やりたい仕事をしているうちに世の中の役に立ち、いつの間にか自分自身も成長できるようになっています。この成功体験を新人1年目からできるのは、すごいことだと思います。

渡辺:「Conwayの法則」というのがあるのですが、組織が作り出したソフトウエアの構造は組織そのものを映した鏡であり、組織の文化が反映されていると指摘しています。組織の構造やコミュニケーションの密度が粗いとソフトウエアも変化に弱いモノリシックなものになりがちです。

変化に強く、常にフレキシブルに対応できるアーキテクチャを作ろうとすると、やはり、組織の在り方も変わっていく必要があると考えています。その意味で、プロジェクトマネジメントだけではなくて、もっと大きな括りでいろいろと変えていくのが夢ですね。

大槻:私がウォーターフォール、アジャイルの両方をやってみて思ったのは、結局、ウォーターフォールが昨今「ダサい」わけではなく、やることは同じ方向性で、基礎となる考えや取り組みがただ短くなっているだけで、基礎がわかっていないとできないということでした。

変化が早いIT業界はドッグイヤーだといわれ、何かをやっているうちにどんどん時間が進んでいきます。ビルを建てている間に都市が変わってしまうような感覚です。ですから、小さなものからボンボン作って一本のビルを建て、時代に追いつくことが大切になります。富士ソフトにはこの感覚を大切にしているメンバーがたくさんいます。新しい技術にトライしていますが、そのベースとなるナレッジや基礎をしっかり持っていることをアピールしていきたいと考えています。

八木 : 私は会社を成長、発展させるために一つの夢を持っています。その夢をシンプルにいうと「当社の優秀な技術者が、たくさんWikipediaに載ってくれないかな」ということですね(笑)。

一同:(笑)

八木 : 多くの技術者が在籍し、活躍している当社だからこそ、日本版Wikipediaだけではなく、海外版Wikipediaにも記事が書かれるエンジニアを創出することを、社会貢献も含めて目標にしています。エンジニアが「この人、富士ソフトの社員だったんだ」っていわれるような会社は簡単にいえば「魅力のある会社」ということになると思います。そういう高みを目指した社内での切磋琢磨があるといいと考えています。

――最後に、読者にメッセージをお願いします。

大槻:私のいるグループでは、新人と中途採用者向けに資料を作っています。かしこまっていないオープンな内容です。興味を持ってくれたら「やって駄目なら止めてみる」とアジャイルスクラムの精神で連絡してみてください。「フラットに話せる大企業ですよ」とアピールしたいと思っています。

渡辺:何かやりたいことがあるなら、必ず当社のなかで見つかります。技術の仕事がやりたければ見つけられますし、マネジメントは絶賛大募集中で、お客さまとのやりとりが好きだという人も、それが実現できる環境です。働いている人の年齢層も幅広く、若い人もいれば中高年もいて、それぞれのスタンスでざっくばらんに働ける企業文化があります。興味があったら、とりあえず富士ソフトに一度来てみてください。

八木 : 自分の好きなものを追い求められる人が、この業界で活躍できる人だと思っています。どんなものでも、コツコツと長く物事をやる方々はIT業界にすごく向いています。当社内を見てもバンドが好きな人、サッカーが好きな人、料理が好きな人といった凝り性の人は活躍していますし、出世する気がします。

今、IT分野に自信がなくても、「これだったらやり続けている」と何か1つ自分が凝り性だと思えるものがある方は、ぜひ当社にチャレンジしてほしいですね。

お客さまの幸せと社員の幸せがなかったら会社は成長できません。夢を持った人たちと話をしていきたいですね。

編集後記

富士ソフト株式会社の八木氏、大槻氏、渡辺氏にお話を伺って、良い意味で「大企業らしくない」と感じました。50年を超える歴史のなかで創造と挑戦を繰り返し、豊富なナレッジを得て、様々な繋がりを紡ぎあげてきた同社。幅広く深い経験が独特の優しくも締まった空気感覚を作り、スペシャリストを育てる文化を醸成しています。今後、教育に力を入れていくことで、さらにフラットな大企業として飛躍していくと感じました。
そんな富士ソフトでは、今、新たなメンバーを募集しているといいます。本記事を読み、世の中に貢献する仕事をして自分も成長したいと思われた方はぜひ応募要項等をご覧ください。

取材/文:神田 富士晴
撮影:平原克彦

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