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Zoomの拡張機能!?シームレス連携が出来るAPIとSDKについて中の人に聞いてみた

日本中で、もう知らない人はいないのではないかと思えるビデオコミュニケーションシステム『Zoom』。コロナ禍のテレワークや家族・仲間とのコミュニケーションに欠かせないツールとして世界を支えてくれています。そんなZoom(ZVC JAPAN)は近年、プラットフォーム領域、具体的には*¹CPaaS(Communications Platform as a Service)領域で大きな動きを見せています。ZoomのISVパートナープログラムにより、企業のお客さまは自社製品にZoomをシームレスに統合することができます。圧倒的に安定しているZoomを自社サービスで活用できることに価値を感じる企業も多く、Webサービスからセットトップボックスのようなデバイスにまで組み込まれた事例が登場しています。
そこで、今回はZVC JAPAN 株式会社のISV ビジネスディベロップメントマネージャーの佐野 健氏にお話を伺いました。

*¹CPaaS(Communications Platform as a Service)とは、「通信機能をAPIやSDKで接続するクラウドサービス」を指し、音声通話や音声・映像による会議システム、録音・録画など通信に関わるサービスやシステムの間を、APIを利用して接続することができる技術を用いたサービスです。

プロフィール

佐野 健(さの けん)
ZVC JAPAN 株式会社
ISV ビジネスディベロップメントマネージャー
(ISV Business Development Manager)
2021年4月にZVC JapanにISV ビジネスディベロップメントマネージャーとして入社。プラットフォームビジネス領域の事業開発を担当。IT業界で長らく活躍しており、外資系を中心に営業・マーケティング関連で豊富な経験を積み、近年は事業開発やアライアンスに従事してきた。

ビデオコミュニケーションシステムZoomだけでなく、プラットフォーム型のサービスも展開

――はじめに、Zoom(ZVC JAPAN)がどんな会社か簡単に説明をお願いします。

佐野 健氏(以下、佐野):当社は「Delivering Happiness」というカンパニーカルチャーを軸にビデオコミュニケーションプラットフォーム「Zoom」を展開しています。私たちが最も大切にしているのは、ユーザーやパートナーが我々のサービスを気持ちよく使い、ハッピーになっていただくことです。その想いを品質や使いやすいUIとして、製品に反映しているので、ご好評をいただき、多くの方々に使っていただけているのだと思っています。

――ビデオ通話システムZoomだけでなく、CPaaS、プラットフォームでのサービス提供も開始されている背景を教えてください。

佐野:Zoomはパンデミックの影響もあり、世界中で多くの方々にご利用いただくようになりました。しかし、実はIT業界内では歴史が浅く、2011年に生まれたクラウドファーストのサービスです。創業時点でクラウド技術が確立していたこともあって、フルスクラッチでクラウド上でサービスを実装するのが、当然の選択として作られています。

歴史が長いと、どうしても昔から続いてきたレガシーコードなどがありますので、それを何とかして動かしているサービスも世の中にはあると思います。我々はフルスクラッチ、クラウドネイティブでスタートすることができたため、最新の環境に順応でき現在のビジネスが展開できたのだと考えています。

クラウドネイティブだったことで、利用者数が莫大に伸びた2020年からのコロナ禍の状況でも耐えうるアーキテクチャを作り上げることができました。従来のテクノロジーでは、あれほどの需要が突然来たら、難しかったと思います。
またレガシーコードが無いため、ZoomははじめからAPIやSDKを活用してコンポーネント化された状態で作り上げられていますので、もともとCPaaSとは親和性が高く、このエンジンを他社に提供しやすい状態でした。このような背景があり、本国アメリカでは数年前からCPaaSビジネスを展開していました。

――今、CPaaS市場が急速に拡大していてプレイヤーも増えていますが、その中でZoomはどのような立ち位置にあるのでしょうか?

佐野:「誰がCPaaSプレイヤーなのか?」という定義はいろいろありますが、正直なところ現時点でZoomをSaaSやUCaaS*2のプレイヤー、ビデオ会議システムとして知っていてもZoomのCPaaSビジネスをご存知ないという方がほとんどだと感じています。

*2 UCaaS(Unified Communications as a Service)とは、音声・ビデオ会議・メール(メッセージング)・チャット等の統合コミュニケーションをインターネット経由でサービスとして提供することです。

また、一般の方はユーザーとして接点があったとしてもCPaaSの事業者を認識することはまずありません。CPaaS全般に言えることですが、エンジニアや事業企画をしている方だけが関心を持っているジャンルだと思います。

――自社サービスに安定したZoomが組み込めると知り、興味を持つ人は多いのではないでしょうか?

佐野:私たちはSaaS版のアプリベンダーだと思われていて、CPaaSビジネスをしていると気が付かない方も多いのではないかと思っています。しかしながら、コロナの影響もありさまざまなサービスやビジネスがオンラインに転換していることもあり、CPaaSのマーケットは今後も大きく成長すると見ていますので、より多くの皆さまに我々のCPaaSビジネスのことを知っていただきたいと思っています。

Zoomの製品ポートフォリオ

利用ニーズに合わせてMeeting SDK、Video SDKなど様々な選択肢を用意

――ZoomのCPaaSの中心となるZoom Meeting SDK、Zoom Video SDKのうち、まずZoom Meeting SDKの概要を教えてください。

佐野:Zoom Meeting SDKは、今、世界中でお使いいただいている、「Zoom Meeting」と「Zoom Webinar」といったコンポーネントを第三者のサービスやアプリケーションの中に組み込んで利用してもらうためのものです。

Meeting SDKの特徴は、まず、Zoomと互換性があるので、ZoomのデフォルトのUI/UXをそのまま利用できることにあります。開発者は、非常に少ないコードで簡単にZoomを自分のサービスやアプリケーションに実装できるのです。そして、Meeting SDKを利用しているユーザーと通常のZoomクライアントアプリケーションを利用しているユーザーが、直接つながってビデオ通話ができるようになっています。

通常こういったSDKのPaaS製品の場合、End to Endで開発しなければなりませんが、Meeting SDKでは通常のZoomのアプリケーションをそのまま利用できるのも特徴の1つです。

――一例ですが、コールセンターなどを利用する際に利用客はWEBページでMeeting SDKによって表示された通話画面を見て、それに答えるオペレーターがZoomから直接入って使うといった方法が選択できることになりますね。

佐野:はい、まさにそういう使い方です。ちょっとややこしい話になってしまいますが、Meeting SDKを使わずに、実はAPIのみで利用することもできます。今のコールセンターの例で言うと、問い合わせをする利用客もZoomアプリ、受けるオペレーターもZoomアプリを使用して、その間に入るプラットフォームが使用料金を支払うというスキームを作ることも可能です。このプラットフォーム利用のスキームを「ISVパートナープログラム」と呼んでいます。

事例として、スポットコンサル(1時間インタビュー)のマッチングサービス「ビザスク(VisasQ)」があります。1時間単位のスポットでコンサルを受けたい依頼企業とアドバイザーのマッチングが成立したら、ビザスクが契約したZoomでスポットコンサルが実施される形態です。
ビザスクでは、Zoomを利用して会話する両方がZoomアプリを使用することが前提になったサービス設計がされています。サービスやアプリケーションの参加者ごとに、Meeting SDKを利用するかZoomのアプリを利用するかニーズに合わせて柔軟に選ぶことができます。

――資料を拝見すると、英会話スクールでも利用事例がありますが、こちらではどのようにSDKを使用されていますか?

佐野:英会話スクール「Gaba」では、WEBのMeeting SDKとiOSのMeeting SDKを利用しています。英会話講師は基本的に各教室からChromeのMeeting SDKでレッスンに入ります。受講生は、Meeting SDKを組み込んだGabaの受講者専用ウェブサイトか、iOSアプリのいずれかを選んでレッスンが受けられる構造です。iOSを利用する受講生はGabaのアプリさえ入っていればそのままレッスンに参加できます。Zoomが普及したとはいっても、PCやスマートフォンにZoomアプリが入ってない人も多いので、普段利用しているGabaのサイトやアプリからレッスンに入れるのは使い勝手はよいですね。

――自社の認証システムを通った人が使えるように設定できるのですね。

佐野:はい、セキュリティもしっかり作る込むことができます。認証自体は、APIだけでも対応できるよう考慮しました。「ISVパートナープログラム」をご利用いただくと、URLにハッシュを入れて、不特定多数の方がご利用いただけないように制限をかけることができるのです。

このように様々なニーズに合わせた組み合わせ方ができ、選択肢があることがMeeting SDKのメリットです。やはりWEBサービスに直接組み込みたいというニーズも多いですし、次にご紹介するVideo SDKのように、ひと目ではZoomだとわからないように組み上げたいといったニーズもあるので、我々としては多種多様な選択肢を用意して対応しています。

どの選択肢であっても、バックエンドは全て共通して我々の強固で安定したZoomのインフラを使うことになるので、ビデオ通話の品質や安定性が得られるのが最大のメリットだと考えています。

――続いて、今、お話に出たZoom Video SDKがどのようなものか教えてください。

佐野:Video SDKは先ほど話したMeeting SDKとバックエンドは同じですが、フロントが大きく異なり、Zoomクライアントとの互換性はなくなるものの、その分、UI/UXが自由にカスタマイズできるようになったものです。

単純にZoomのような画面で通話をすることを目指すのではなく、例えばゲームの中に埋め込みたいとか、ライブコマース的なアプリの中でエンターテインメント性を強めたいといった場合にご利用いただけます。当然、開発工数はそのUI/UX構築にかかる分だけ膨らむイメージですね。

――Video SDKとMeeting SDKの違いは、UI/UXなど、カスタマイズ機能の有無と考えてよいのでしょうか?

佐野:基本はUI/UXのカスタマイズにあります。くわえて、2点ありまして、まずZoom MeetingやZoom Webinarとの互換性があるかどうかです。Meeting SDKでは互換性があるので、ブレイクアウトルームや文字起こしといった機能もご利用いただけますし、前述の通りZoomのクライアントアプリと双方向に通信することも可能です。Video SDKではこれらのことはできません。
もう1点がビデオとオーディオの生データへのアクセスです。Video SDKは、リアルタイムで生のデータを取り扱うことができるのが特徴になっています。Meeting SDKはZoomとの互換性を重視しているため、そのようなリアルタイムの分析や加工はできなくなっています。

安定したビデオ通話機能を自社サービスに簡単に導入できるのが魅力

まごチャンネル 写真提供:株式会社チカク

――これまでもいくつかお伺いしていますが、サービスの導入事例をいくつか教えてください。

佐野:さきほどお話したように英会話スクールの「Gaba」、スポットコンサルの「ビザスク」に利用いただいています。

加えて面白いのは、最近株式会社チカクが開発した「テレビ電話」でMeeting SDKが使われている事例です。チカクの従来のサービスである「まごチャンネル」は、親世代のスマートフォンから、孫の動画や写真をチカクのクラウドにアップすると、祖父・祖母のセットトップボックスを経由し、その動画や写真を視聴できます。。

このセットトップボックスに専用カメラを接続し、親世代のスマートフォンとのテレビ電話を実現するため、AndroidのZoom Meeting SDKをご利用いただくことになりました。このようにデバイスに組み込む形での利用も進んでいます。

――事業企画の側から見てMeeting SDK、Video SDKを利用するメリットはどういった点にありますか?

佐野:事業企画から見た場合のメリットは非常にシンプルです。ビデオ通話を自社サービスの中に組み込もうと考えたとき、Zoomは様々なソリューションを用意しているのでニーズに合わせた形態で利用できます。ビデオ通話を導入するにあたり、ベストなソリューションを提供できると考えています。

またZoomが非常に安定しているメリットもポイントです。事業企画にとって最大の「悪夢」は、リリース後にユーザーが不満を持って問い合わせが増えたり、品質トラブルなどでプロジェクトが火を噴いたりすることだと思います。また、オンラインセミナー、有料イベントを開催したときに、それが途中で切れてしまっては話になりません。Zoomなら、安定したビデオ通信インフラを簡単に手に入れることができるのです。

――開発者の目線で見たとき、Video SDKやMeeting SDKを利用する魅力は何ですか?

佐野:事業企画から見たメリットと同じですが、安定したものが簡単に作れることだと思います。現在では、オープンソースのテクノロジーも充実してきており、開発者がZoomと同じことをフルスクラッチで作り上げようと思えばできるはずです。実際に、こういったことに挑戦されているエンジニアの方も多いのではないでしょうか。

しかし、我々のSDKやAPIを活用していただければ、ビデオ通話のスキームは簡単に実現できます。その部分を我々にお任せいただいて、本来のサービス部分の開発により注力できるのが、開発者から見た魅力だと考えています。

ZoomのAPI、SDKが「使える」ことを知ってもらうための活動を強化していきたい

――今後、どのような展開をお考えになっていますか? プランなどありましたら教えてください。

佐野:現在、非常に多くの企業や組織からお声がけをいただいています。これから様々な事例が増えていくと思うので、積極的に皆さんにご紹介していきたいです。ZoomのCPaaSへの取り組みが多くの方々の目に触れるようにしていきたいと思っています。

その一環として、2022年6月に開催される「Qiita Engineer Festa 2022」に初めて参加させていただくことになりました。ZoomのAPI、SDKに関する投稿が増えたらうれしいですし、多くの方に「自社サービスへ簡単にZoomが組み込める」ことを知ってほしいですね。

――Meeting SDK、Video SDKに興味を持つ人は多いと思います。

佐野:ZoomのAPI、SDKは全て公開していますので、社内での検証目的であれば今すぐに使っていただけます。

※プラットフォーム(第三者)利用が伴う場合は別途「ISVパートナープログラム」をご契約をいただく必要があります。詳細は営業担当者からご案内しますので、こちらからお問い合わせください。

佐野:Zoom APIとMeeting SDKにおいては、社内利用に関して有償ライセンスを1ライセンスでもお持ちであれば、無償でお試しいただけます。とくに追加の費用はいただいていません。資料は英語になってしまいますが、ドキュメントも全て公開しているのでご覧いただけます。

Video SDKは、オンラインでサインアップしていただければ、毎月一定の利用までは無料でお試しいただけます。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

佐野:ZoomのAPI、SDKは無料でお試しいただけますので「ぜひ使ってみませんか!」とお伝えしたいですね。ビデオコミュニケーションのニーズがあるサービスをお持ちであればビデオ通話をサービスの中に組み込むことを考えてみませんか? Zoomでこんなに簡単にできるということをぜひ、体感してみてください。

そして、試した方は、「Qiita Engineer Festa 2022」で豪華なプレゼント企画をやっていますので、ぜひQiitaに記事を投稿してみてください。

編集後記

コロナ禍の日本で、非常に多くの方々がビデオ通話サービス「Zoom」を利用しました。安定性が高く、通話の映像・音質が高品質なことから、あっという間に水道・ガス・電気といった社会インフラレベルで使用されるようになっています。そんなZoom(ZVC JAPAN)では、API、SDKを活用したCPaaSの提供をスタートさせています。この圧倒的な「ビデオ通話力」を簡単に自社サービスで利用できるとはすごい話だと思いました。とくにオンラインでのビジネス展開をしていたり、ウェビナーなどイベントを開催していたりする事業企画担当者は魅力的に感じられたのではないでしょうか?
Zoom Meeting SDK、Zoom Video SDKを利用して、新たなサービスを開発したいと思ったエンジニアの方も多いと思います。上にあるように基本的に無料で試すことができるので、ぜひ一度トライしてみてください。

取材/文:神田 富士晴
撮影:清水 知恵子
撮影場所:WeWork TK 池田山

Zoom Developer Platform

Zoomで利用可能なAPIやSDKを中心にシステム連携を実現したり、Zoomを自社のアプリやウェブサービスに組込むための技術情報を提供しています
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