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エンジニアキャリアの多様性〜雇用形態と働き方〜「Qiita Engineer Summit 2021 Winter」イベントレポート


2021年12月17日、エンジニアとして活動している方を対象にしたオンライントークセッション「Qiita Engineer Summit 2021 Winter」が開催されました。こちらは、“Be a Contributor”がメインテーマとして据えられて、「エンジニアリングは社会に、そして世界にどう貢献できるのか?」を各企業が考え、取り組むそれぞれのエンジニアリングについて語るべく、Qiitaが主催したものとなります。

第2弾のセッションテーマは「エンジニアキャリアの多様性〜雇用形態と働き方〜」。今回は、株式会社VSNと株式会社エイチーム引越し侍によるトークセッションの様子をお伝えします。
※本レポートでは、当日のセッショントーク内容の中からポイントとなる部分等を抽出して再編集しています。

登壇者情報

米田 真一郎
株式会社VSN
Products&Consumer事業本部 本部長
2001年、ソフトエンジニアとしてVSNに入社後、インフラエンジニアへジョブチェンジし海外でNW構築に従事。PMとしてIoT関連のシステム設計及びシステム統合に携わる。その後、ITエンジニア部門約1,500名の責任者として人事制度の構築や技術トレーニング体系の整備、中期経営計画の策定などに従事。通信キャリア系・メーカー系のエンジニア・営業が所属する部門の事業部長などを経て、2021年より現職。

 

高橋 宏明
株式会社エイチーム引越し侍
執行役員
1999年、新卒で株式会社野村総合研究所入社、大規模システムの基盤技術開発に従事。2000年、株式会社ネクスト(現LIFULL)へ転職し、Webエンジニアとして受託開発や自社サービス開発、および事業運営に関わる。2009年、エイチームへ入社。現在は、Qiita株式会社の他、グループ会社であるエイチーム引越し侍及びエイチームコネクトの技術統括としてWebサービスの開発の他、管理部門系や採用など会社・事業運営に広く携わる。Qiita株式会社の取締役と株式会社エイチームコネクトの執行役員も兼任。

そもそも、エンジニアの正社員と派遣社員の働き方にどんな違いがある?

--まずはじめに「そもそも、エンジニアの正社員と派遣社員の働き方にどんな違いがある?」のか、というところを色々な観点から見ていければと思っています。お二方それぞれのご経験から、違いについてのお考えを教えてください。

米田:プロパーの皆様からしたら、外部のパートナーを活用するというところにおいては、例えばNBAから助っ人で来てもらうみたいなイメージだと思うんです。自社のリソースだけで足りないところを、外部リソースを使って補っていくというところだと思います。
我々のようなアウトソーシング事業をやっている者からすれば、そこが非常にやりがいであり、自分たちの市場価値であり、かつお客様からの期待を一手に受けてプレッシャーを感じる部分でもあります。

高橋:私は、最初は大手SIerからキャリアをスタートしまして、その後スタートアップ企業に入っています。当時は自宅で色々な開発をしていたりしまして、派遣ではないのですが、色々な業界やシステムに携われるというところは、経験の幅を広げるという意味では魅力的だったのかなと思います。
それに対して自社開発のものだと、一つのプロダクトに長く携われることが前提になるので、自分が作っているサービスに対する愛着を持てるというところが楽しみだったり喜びなのかなと思っています。長く携わるので、当然キャリアパスとしては組織のマネージャーやプロダクトマネージャーという立場か、もしくはスペシャリストという方向性に大きく大別されることになると思います。

--エイチームグループって、エンジニアの方は基本的にみなさん正社員なのですか?

高橋:はい。

--受託をやっていた時から、今のように自社開発がほぼなくなってきた所で、何か違いはありますでしょうか?

高橋:一概にどうだってわけではなくて、やっぱりそこの会社の文化だったり考え方によるかなと思っています。すごく分業化されてる会社もあったりだとか、あとは環境だけではなく自分としてどうだってところもあると思うんですよね。
環境として幅が広がったり、どういう立ち位置になるのかがある程度決まっている所もあれば、そうじゃないところもあって、それは結構自分次第で変わるのかなと思っています。手を挙げればどんな分野であってもどんどんと幅は広がっていくし、企画とか上位工程の方に入っていくこともできますが、一方でただ単に動かずに受けてばかりだと、多分そういう風にはなっていかないだろうなと。環境もそうだし、自らどうなりたいっていうところにもよってくるかなと思います。

--ありがとうございます。先んじて「派遣」についても、色々な派遣の形があると思うので、それぞれの違いみたいなところも前提を整理するという観点で教えていただければと思います。

米田:そうですね。派遣と言ってもやはり有期雇用、いわゆる期間が限定されている登録型の派遣であったり、無期雇用型の派遣であったりというところで色々あると思います。VSNの場合は無期雇用派遣型なので、派遣というアウトソーシングというビジネスをやっていますけど、弊社に属しているエンジニアは全て正社員という形になっているので、そういった所で色々な雇用スタイルはあるかなと思っています。

--なるほど。ちなみに、派遣社員さんの役割は時代によって変化したところはあるのでしょうか?

米田:はい。時代によって当然変化しています。今日はITエンジニアの皆様が多く集まるイベントということで、ITに絞った話をしていくと、ITの技術ってかなりトレンドの変遷が早いじゃないですか。つまりお客様も求める技術領域というのが変わってくるんですよね。
私も本部長という形で本部責任者をやらせてもらってますけど、VSNに入社した時はソフトウェアエンジニアで、そこからインフラ系のネットワーク、サーバーエンジニアにジョブチェンジしてきました。エンジニアを10年経験してきた中で、例えば入社した時代はSolarisを扱ってたのですが、それが時代の変遷とともにLinux系に移行していって、どんどんと使うOSが変わっていきました。そのタイミングでお客様が求めるOSのニーズも変わっていったわけです。
もう一つ、去年のパンデミック以降、ワークスタイルがオンサイトで収容するというところからリモートワークがグローバルで浸透していったじゃないですか。それによって今社会がどうなっているのかというと、いわゆる自分で自分を律して、セルフマネジメントできるエンジニアが求められてきてると思うんですよね。
つまり以前まではオフィスに集合して、目の前に上司部下の関係性があって、なにか気づけば上司からフィードバックをもらえる、何か質問があれば上司にすぐ質問できるみたいな環境から、自分の家で一人でワークしなければいけない。そういった時に、自分でものごとを考えて主体的に課題を解決していく。こういった動きが求められる社会に徐々に変化してきているという風に個人的には感じてます。

自社開発派遣のここが良い/良くない

--続いてのテーマが「自社開発派遣のここが良い/良くない」です。これについてはいかがでしょうか?

高橋:自社開発の場合、当然自分たちの事業・サービスを作っているわけですが、そこに対する思い入れを持てることが一番の良いことなんじゃないかなと思っています。自社サービスを色んな職種の人たちと議論しながら成長させていくってところが面白味かなと。
また、モノを作るだけ、プログラムコードを書くだけ、システムを作るだけじゃなくて、事業における経験幅というのが広いんじゃないかなとも思います。先程も言ったように、自ら手を挙げることで、それこそ広告に携わったり、予算とか事業をどうしていくのかみたいなところまで関わることが可能かなと思います。よく「企画がやりたい」みたいな話があるのですが、企画もできるというよりは、どうしたらサービスが良くなるかをエンジニアも含めてみんなで考える、という感覚かなと思います。
あとは、エンジニアの視点から言うと、技術選定にも結構裁量が持てるのかなと思います。古いサービスであれば、自分たちの裁量をもって技術選定をしてモダンなものにしていくってところができるんじゃないかなと思います。もちろん、先ほども言ったとおり一概には言えないんですけど、傾向としては今言ったような感じかなと思います。

--米田さんはいかがでしょうか?

米田:私がエンジニアとして働いていた10年間の中で、何社かのお客様と一緒にお仕事させていただいたのですが、そこで感じたのは、やはり各社ごとに企業風土、文化が違うんですね。例えば同じ企業でも部署が変われば風土文化が全然違います。これを学べるというところは、派遣のメリットの一つかなと思います。
あとは、様々な業界の経験が出来るということもメリットとしてあるかなと思います。事業の内容が違うので、業界ごとの特殊性などを業務を通じて学べることが非常に大きなメリットかなと思います。

--自社開発だと、こういったところは難しくなってきそうとかはありますか?

高橋:そうですね。そこが一番の違いかなとは思います。エイチームみたいに事業ドメインを定めず色々な事業をやっている会社もあるので、転職しなくても部署の移動によって実現できることもあるかと思うのですが、たいていの会社は事業ドメインを大きくしていないと思うので、限定された業界の中でのシステムになると思います。特にベンチャーであれば、新規事業をやることが多いと思うので、自分たちで文化を作っていく、変えていくってところは逆にやりやすく求められてるのかなと思います。

--もう一度米田さんに伺いたいのですが、派遣って一つの業務に入ったらそこでずっと開発をするというイメージが一般的にあると思い、そういったところは実態としてはどうなんでしょうか?

米田:確かに先ほど高橋さんがおっしゃったような、プロパーが経験できるような事業運営については、外部パートナーだとなかなか任せてもらえる機会が少ないかなと感じます。事業運営をプロジェクトを通してマネジメントしていきたいというエンジニアさんにとっては、若干物足りなく感じる時が多いのかなというのはありますね。

もし今までの経験を踏まえてキャリアのスタートに戻るならどんな働き方をする?

--最後のテーマは「もし今までの経験を踏まえてキャリアのスタートに戻るならどんな働き方をする?」です。こちらも、お二人のご経験からの意見を伺いたいと思います。

米田:私としてはこの業界に身をおいて、パートナーとしてお客様サイドでエンジニアリングサービスを実施していくということに対しては、特に大きな後悔はありません。一方で特に若かりし頃、自分がここの業務領域まで踏み込みたいと思った時に、それはプロパーの領域ですという壁がよくあったんですけど、そういった所を飛び越えるにあたって、正社員で自社開発でという働き方も非常に魅力的だなと感じた時も多々ありました。
なので、どちらが良いかは、本当にそれぞれのキャリアプラン・キャリアビジョンによって変わってくると思います。しかも、それは今の自分の置かれている状況によって変わるじゃないですか。独身の時の自分、結婚してからの自分、当然違うと思うので、それによってどう自分がそこに「納得」できるような形でいけるのかなというところを、常に模索して動くことが重要かなと思います。

--例えばご自身が学生の場合、どちらを選びますか?

米田:完全に個人的な意見なのですが、今のこのマーケットトレンドにおいては、自分はデータサイエンティストとしていわゆる自社開発、正社員としてやってみたいなというのはありますね。データサイエンティストの業務を通じて事業を動かしてみたく、事業を動かしていく過程の中で、もっと大きな視野で言えば経営を見てみたいなと。

--高橋さんはいかがですか?

高橋:僕は事業に携わっていたいので、多分変わらずに自社サービスをやっているとは思います。ただ、若いうちに色々な業界のビジネスの流れやシステムを経験しておくことは、その後のエンジニアとしての幅を形成するのにすごく良いと思っていて、自分も自宅で色んな業界に携わったのが今に生きてるなと凄く思うので、やっぱり両方を経験したいなと思います。
一方で、今学生に戻った時にどっちが良いかという質問に対しては、凄く悩ましいですね。20年位前の僕は大手企業を選んだわけで、それは大手からベンチャー企業にはいつでも行けるなと考えたからです。逆に、ベンチャーから大手にはなかなか行けないんじゃないかなと思っていたのですが、現在であればそんなことは全然ないとも思っています。どちらでも経験はできるし、ベンチャーの方がむしろスピードは早かったりするので、どっちにするか悩ましいなあという風に思っています。

--ありがとうございます。以上でお時間になりましたので、このセッションは終了します。この後米田さんは別のセッションでもご登壇いただくので、そちらも楽しみにお聞きいただければと思います。

取材/文:長岡武司

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